~語るべきことなど何もないのに~
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というわけで今日のお題はスカイクロラ。
考えてみると、去年はヱヴァンゲリヲンが公開されただけでも十分だったのに、今年はポニョに加えて押井守のスカイクロラまで観られたという意味では贅沢な年だった。そしてポニョが当たり前のようにヒット(公開3日で興行収入100億円突破)を飛ばす一方、スカイクロラは当たり前のように墜落した(興行収入7億円・・・)わけだけど、ま、
それもさもありなんと。
押井映画が難解というのはよく言われる。しかしスカイクロラのようなわかりやすい映画が売れなかったことからすると、それが直接の原因とも考えにくい。たしかに、目玉と言われていた戦闘機同士のドッグファイトも、普段からハリウッド映画を観てる人たちからは取るに足らないものと酷評されてた(でもCG技術云々など専門的なことを抜きにしても、あんな風に生き物のように戦闘機を飛ばせる監督が押井守と宮﨑駿以外にいるのか、と私は思う)。
まあ、ぶっちゃければ押井監督が売れる映画の作り方を知らないだけなんだけど、そういう、売れるためのチープさを持ち合わせていないところが、良くも悪くも押井映画の魅力といえる。メディアの前で宮﨑作品に対する挑発的発言をしたり(お約束のケンカ芸)、笑っていいとものテレホンショッキングに出てまで宣伝しても、まあ売れないだろうなと思っていたし私はそれで全然問題ないと思う(たぶん)。
こんなことを言っているとお前スノッブかみたいな感じになるのでもう少し説明させていただくと、押井作品が売れない理由は、テーマの暑苦しさにあると思う。実際、スカイクロラに関するインタビューで押井監督は、「生きていることを実感できない若者たちに対して言いたいことがある」ということをしきりに強調している。
もともと生の実感というテーマ自体は押井映画(特にパトレイバーや攻殻以降)に共通するものだったが、ただ今までは、生の実感とか自分らしく生きるとか個性とか記号として社会に蔓延する上っ面な価値観に対してそれは本当にリアルなのか?ととことん反証してつぶしていき、何もなくなったその先に本当の生の実感のようなものがあるのではないか、と思わせる逆説的な方法だった。それに対して今回のスカイクロラでは、生の実感とはどういうものかを正面から積極的に証明しようとした点でガラッと変わっている。テレホンショッキングの件はプロデューサー命令があったからだろうけど、映画を観た後では、そこまでしてでも若者に伝えたいという押井の真摯な思いを感じた。
こうした転換のきっかけとなったのは、前作イノセンスの方向性の限界に加えてプライベートの事情が大きかったという。押井監督は自身の愛犬を映画に登場させるなど犬に対する溺愛ぶりは有名で、家庭のことはそっちのけで愛犬のことばかり考えているような人だった。が、愛犬が死んで孤独になり、娘が結婚したことで自分が父であったことを遅まきながら自覚するようになり、そして今では50代半ばにして空手を習い始めて体に血が流れていることを実感しているという(・・・とそれが生の実感かよと思わなくもないが、想像すると泣けてくるw)。そういった事情が作品の作り方に色濃く出たのは、ごくごく自然だったといえる。そう考えると、草薙水素(スイト)の生き方の不器用さに押井監督の不器用さを重ねてみることも可能かもしれない。
スイト役の菊池凛子については芸能人による話題づくりとして批判される向きもあったけど、私には、声優に慣れていない彼女の醸し出す空気は、生きることに慣れていないスイトに意外とマッチしていたと思う。もともと技術的なことが気にならない(わからない)私からすれば、押井監督が気が狂うほどテープを聴いて彼女しかいないと思ったというエピソードとセットでみるとむしろ説得力すら感じる。盲目的な善意解釈と言われればそれまでだけど、感情を閉じ込める無機質なしゃべり方から最後にそれを爆発させるまでの持っていき方なんて私思わず
これが映画なんだよ!
ていうかこれロックでしょ!
って膝を叩きたくなりましたよ(もちろん涙目)。
あと膝を叩きたくなったシーンは、やはり最後にカンナミがティーチャーに向かっていくときのセリフでしょうか。これ以上下手な説明をすると映画の価値を貶めるだけなので控えるけど、そこは映画のテーマと深く関連する部分、かつ作品に深みを持たせているところではないかと。あの字幕のズレはカンヌの観客にはまったく伝わらなかったでしょうね。まあホント、だから押井映画は売れないんだよなあwとホメ言葉的に言いたくなる。実際、売れて欲しくないですよ。売れたら押井映画じゃなくなると思う。本人はいやがるかもしれないけど、10年経ってから絶賛されるような映画であって欲しいです。
といいつつ私は、アニメは宮﨑アニメやガンダム程度なら観るという人には、是非とも押井アニメにも触れてみて欲しいと思うのです。入門編はやはりパトレイバー2でしょう。「それロボットアニメじゃないの?」と侮ることなかれ。とても約15年前の作品とは思えませんです。
・・・てな感じで最後はまくしたてましたが、それにしても今年は押井守と宮﨑駿という2人の巨匠が別段示し合わせたわけでもなくポジティブな作品を発表したことは映画ファンとして喜ばしい反面、それは現実世界の深刻さの裏返しにも思えなくもなくて、その辺で複雑な感じもしたりしているウシでした以上。
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絶対誰も気づかないと思いますがdeathは不吉なので改名。
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